CoCシナリオ「竹の花は二度咲く」

参加人数2~3人

導入

 とある年の9月、連休を利用して温泉民宿貸切ツアーに参加した4人はチャーター便のマイクロバスで人里離れた山奥にある民宿「天然温泉めぐり屋」にやってくる。参加者は全部で7人。残りの3人は現地集合でやってくると言い残し運転手は去っていった。民宿に入るとそこには番頭の姿も仲居の姿も主人の姿すら見られなかった。なぜか部屋の割り当ては既に決まっており、訝りながらも各々部屋へと入室していく。全7室の客室には名札がついており4人の他3人の客の部屋も用意してあるが、姿は見えない。腑に落ちない不気味さを覚えつつも三々五々温泉や自室に散っていくツアー客。夕食の時間になると誰が用意したのか宴会場にお膳が用意されていた。

 夕食のあとに酒盛りをしていた参加者がいまだ現れない3人の参加者が実はもう部屋にいるのではないかと部屋に押しかける。そこにはまだ見ぬ参加者の遺体が転がっており、他の2部屋も同様であった。

 恐れながら夜を迎えた参加者たち。あくる朝、食堂に集まった面々はさらに3人が欠け、昨夜死んでいたはずの3人が加わっていた。

目的

 PLの脱出。

現象

 この民宿はこの世とあの世の境界にあり、3人の死者がいる。死者は生者を殺すことで生者となることができる。死者となったものは次の夜に生者を殺し、生者になる。こうして生と死を繰り返す、延々と。

 この現象から脱出するためには民宿内にちりばめられた手がかりを集め、儀式を行う必要がある。儀式が成功すると、生者は民宿を脱出することができ、死者は死者としてこの民宿に捕らわれ「次」のツアー客を待つことになる。

 また、民宿内での1日は外界ではおよそ3~4ヶ月に相当し死者の部屋が一回りするごとに1年の時間経過が起こる。また、死者となったものは死者である間の記憶がなく、他のツアー客の面々が入れ替わっていても気づくことはない。なお名前など基本的な情報は共有の有無に関わらずなぜか知っているものとするが、死者である間に他ツアー客が新たに知りえた情報に関してはこの限りでない。

 また民宿に滞在している間は日数の経過を認識することができない。ツアー開始日時が2015/9/20であった場合、何日経過しようとも参加者の腕時計、携帯電話など全てにおいて示される日時は2015/9/20のままである。ただし、時刻については故意を除き正しく表示される。同時に午前零時をまたぐ度に民宿内の物品は移動、破壊を問わず開始時の状態に戻る。ただしロビーの部屋割りだけは例外である。

補足

 このシナリオは当初参加人数2~4人、ツアー客全10人で作成した。しかしPL2人でのテストプレイの結果9時間という長丁場となってしまいやむなくシナリオ縮小と相成った。しかしシナリオのシステムとしてはそれ以上の規模で行うことも可能なものとなっている。よってNPCリストや部屋数は上記の数だけ用意してある。本シナリオ上ではNPCリストはそのまま残しKPの裁量で任意に選出するものとし、部屋数および名前、増やし方などについては末尾に添付するものとする。

法則

 死者は部屋の割り当てで決まる。

  1. 梅の間

  2. 桃の間

  3. 桜の間

  4. 藤の間

  5. 栗の間

  6. 菊の間

  7. 椿の間

以上の7部屋があり、この順番でその部屋に入室していた参加者が死者となっていく。各部屋に割り振られた番号はPLには明かされず、必ず「×の間」と呼称する。セッション開始時に死者3名がどの部屋に入っているかはKPが決めてよいが、必ず連番になるようにすること。どこの部屋に入るかによってその夜死者となるかどうかが決まり、PLの判断とRP次第で自由に入れ替えることができる。誰がどこの部屋に入っているかの判定は実際にそこにいるかどうかでなくエントランスの部屋割り表に張ってあるネームプレートで決まるため、これを入れ替えずに人間だけ入れ替えても意味はない。またネームプレートが表にない場合は空いている部屋にランダム(KPの恣意でも可)に割り振られ処理される。よって、部屋割りを無視してPLやNPCが同室に入っても必ず死者3人は選出され、その死体は死者本来の部屋で発見される。

 またPC・NPCを問わず午前零時になると耐え難い眠気に襲われその場で意識を失ってしまう、例えそこが浴槽の中であっても。生者は意識を失った場所でそのまま翌朝を迎えるため、ネームプレートを置かずに死者の部屋にいた者は死体の隣で目を覚ますことになる。午前零時を迎えるまでの間に他者によって殺害された者は、自動的にその晩の死者の部屋が割り当てられ翌日も死者として部屋で発見される。一日の間に複数人が殺害された場合は殺害順に死者の部屋が割り当てられる。4人以上殺害された場合は先に殺害された人物から死者候補から外れ、翌朝生者として目を覚ます。

※一日目の部屋割り例
  • 死者の部屋 : 4.藤の間 5.栗の間 6.菊の間

  • 翌日の死者の部屋 : 7.椿の間 1.梅の間 2.桃の間

  • 翌々日の死者の」部屋 : 3.桜の間 4.藤の間 5.栗の間

※午前零時前に5人殺害された場合
  • 1~2人目 : 翌朝生者として目覚める。

  • 3~5人目 : 翌朝死者として発見される。

  • その日死者だった者 : 翌朝生者として目覚める。

NPCリスト

 このNPCリストは使用しなくても、また自由に改変してもよい。

鎌田紀一郎 男性57歳

 バスの運転手。雇われのため一行をめぐり屋に送り届けると、民宿内に入ることなく駐車場に停めた自家用車に乗り換えて去っていく。この民宿で起こる現象について詳しくは知らないが、脱出の起こりうるタイミングが数カ月おきであることは知っているため、脱出の折にはまた彼が迎えに来てくれる。ただしそのことについて参加者たちに知らせることはない。

「それでは皆さん、お達者で」

STR ??

DEX ??

INT ??

CON ??

APP 11

POW ??

SIZ 8

EDU ??

DB ??

HP ??

MP ??

SAN ??

アイデア ??

幸運 ??

知識 ??

運転:自動車(99)

運転:大型車(99)

冬月翔 男性31歳

 来国沙耶の婚約者。町のパン屋さん。大柄で少々強面だが大の甘党で菓子パン研究に余念がない。心優しい正義漢だが、いささかおっとりしすぎている面もある。

「新作のパン思いついたんだけど、どうかな?」

STR 11

DEX 6

INT 16

CON 9

APP 10

POW 9

SIZ 15

EDU 16

DB 1d4

HP 12

MP 9

SAN 45

アイデア80

幸運 45

知識 80

言いくるめ(60)

隠す(60)

経理(65)

コンピュータ(70)

写真術(50)

信用(60)

水泳(70)

説得(30)

電器修理(30)

図書館(60)

値切り(40)

こぶし(70)

来国沙耶 女性27歳

 冬月翔の婚約者。商社のOL。陸上競技経験有り。杓子定規でお堅い性格だが冬月翔に対してはいたって普通の女性らしい態度で接する。

「そんなこと、あるわけないでしょう」

STR 7

DEX 12

INT 12

CON 15

APP 11

POW 13

SIZ 6

EDU 13

DB -1d4

HP 11

MP 13

SAN 65

アイデア60

幸運 65

知識 65

言いくるめ(40)

応急手当(65)

経理(50)

信用(80)

心理学(50)

説得(70)

跳躍(55)

図書館(40)

目星(75)

古谷信 男性45歳

 会社員。電気工事屋さん。よく日焼けした豪放磊落なおっさんだが、職人気質な面も持つ。3年前に妻と死別しておりそれ以来ふらりと一人旅を楽しむようになったが、時折人恋しさに今回のようなツアー旅行にも参加する。酒好き。

「温泉もいいが、やっぱり酒が一番だな!!」

STR 15

DEX 8

INT 9

CON 9

APP 10

POW 8

SIZ 13

EDU 13

DB 1d+4

HP 11

MP 8

SAN 40

アイデア 45

幸運 40

知識 65

化学(20)

機械修理(60)

コンピュータ(60)

重機械操作(60)

制作:電子工作(30)

電器修理(80)

電子工学(30)

目星(70)

桑原良 男性52歳

 桑原理恵の夫。中学校教諭。趣味人。特技はチョーク投げのビール腹。歴史好きから始まりそれにまつわる遺物や人の業、オカルト話などにも傾倒するようになり、ある「噂」を耳にしこのツアーに参加してきた。皮肉屋。

「私の生徒の方が余程物分りがいいですよ」

STR 11

DEX 5

INT 11

CON 10

APP 11

POW 8

SIZ 10

EDU 20

DB 0

HP 10

MP 8

SAN 40

アイデア55

幸運 40

知識 99

オカルト(55)

聞き耳(80)

信用(40)

心理学(60)

人類学(50)

説得(80)

投擲(55)

図書館(85)

博物学(55)

桑原理恵 女性50歳

 桑原良の妻。主婦。洋裁が趣味で、編み物やパッチワークも得意。夫はかなり癖のある人物だが、桑原良が趣味の分野以外には無頓着であることを上手く利用して誘導している。多くの人が彼女にもつ第一印象は「大和撫子」であろうことは間違いない。

「あらあら、あなたったら」

STR 9

DEX 12

INT 13

CON 13

APP 11

POW 9

SIZ 11

EDU 16

DB 0

HP 12

MP 9

SAN 45

アイデア65

幸運 54

知識 80

聞き耳(85)

芸術:洋裁(60)

写真術(50)

信用(50)

心理学(80)

精神分析(65)

説得(65)

図書館(40)

目星(80)

綿谷玲 女性24歳

 フリージャーナリスト。本ツアーについて「噂」を耳にし、潜入取材を試みようと参加。気が強く棘のある物言いをするが、その実臆病。かなり小柄で美人だが見かけによらずタフガイ。

「ふざけないで、どうして私が」

STR 9

DEX 8

INT 13

CON 14

APP 15

POW 12

SIZ 4

EDU 15

DB -1d4

HP 9

MP 12

SAN 60

アイデア65

幸運 60

知識 75

言いくるめ(65)

隠れる(50)

写真術(50)

信用(80)

心理学(60)

説得(60)

図書館(70)

変装(60)

目星(45)

志摩祐介 男性34歳

 久しぶりに帰国したバックパッカー。はじめてのツアー旅行。奔放な性格で豪胆。海外で死にかけたり殺されかけたこともありSANが多少下がっているが、懲りない性質で面白そうだと思ったことにはすぐに首を突っ込む。今回のツアーについて妙な「噂」を知っているが、国内であるため滅多なことは起こらないと信じきっている。

「みんなして追っかけてくるんだ、鉈やら斧やら持ってさ」

STR 14

DEX 11

INT 10

CON 18

APP 11

POW 12

SIZ 15

EDU 12

DB 1d4

HP 17

MP 12

SAN 40

アイデア50

幸運 60

知識 60

言いくるめ(60)

応急手当(70)

聞き耳(60)

信用(35)

説得(75)

ナビゲート(20)

英語(30)

ヒンディー語(30)

キック(45)

組み付き(45)

こぶし(70)

川原勘助 男性55歳

 狂人。本ツアーで起こる怪現象についてすべて知っている。十数年前に彼の息子が神隠しに遭い、すなわちこのツアーに参加し行方不明になった。息子を追ってツアーに参加した彼はこの民宿で息子と再会することができたが、しかし彼の息子は既に発狂していた。息子の言葉の断片と自らが体験した死者と生者の循環からこの民宿で起こる全てを察し、息子を帰還させ自らは永遠にこの民宿で死者となり続けることを決意する。そんな彼にとっての唯一の楽しみが新たなツアー参加者の阿鼻叫喚を観察することであり他参加者たちへの手助けは一切行わない。他参加者によって殺害されない限り彼は生者であり続けるが帰還の儀式が行われようとするとき、民宿に留まるために自害する。

「…」

STR 11

DEX 13

INT 10

CON 10

APP 5

POW 14

SIZ 8

EDU 14

DB 0

HP 9

MP 14

SAN 0

アイデア50

幸運 70

知識 70

NPCの行動パターン

 NPC同士の関係性はPCの干渉がない限り以下のように構成される。

 冬月翔は桑原夫妻に限らず、ツアー客全員と敵対することはなく協力を求められればそれに応じるが、誰かを犠牲にして事を行おうとする場合には協力には応じない。また、来国沙耶の意思や安全を優先して行動するが、彼女をたしなめる常識も持つ。

 来国沙耶は桑原良に対していい感情は持たないが、冬月翔が敵愾心をまったく持たないこと、桑原理恵の人当たりのよさに明確に敵対することはない。また綿谷玲に対しては非協力的で、彼女が「噂」について知っていたことを明らかにすると「どうして黙っていたのか」と敵対心をあらわにする。

 古谷信は自らに敵対しようとする者および酒付き合いの悪いものに対しては関心を示さず、逆に自らに協力的な者および酒付き合いのよい者に対しては協力的になる。その姿勢には少々行き過ぎた面もあり、状況によっては殺人に協力することもある。喋り好きで酒付き合いのよい志摩祐介とは良好な関係となる。

 桑原良は自ら誰かに敵対することはないが、常に皮肉の効いた喋り方をするため周囲に敵対心をもたれやすいため桑原理恵が周囲との緩衝を行っている。ただし冬月翔と志摩祐介は彼の皮肉を意に介さない。

 桑原理恵は常に夫を支える宥める姿勢を示し周囲には物腰柔らかに接するため周囲から敵対心をもたれることはないが、しかしPCやその干渉によって彼女に敵対心をもつ者が現れた場合桑原良やその他NPCを味方につけその者を周囲から孤立させようとする。

 綿谷玲は潜入取材を行うという目的もあり積極的に周囲とコミュニケーションを図ろうとする。「噂」について知っていることはあえて話そうとはしないが別に隠しているわけではなく、死者の部屋で死体を見つけた時点から積極的にそのことを話すようになる。また彼女も棘のある喋り方から敵対心をもたれやすいが、古谷信と志摩祐介からはAPPが高いことと取材目的の饒舌さから一方的に気に入られる。

 志摩祐介は話好きで会話を広げてくれる者や聞いてくれる者には好感を抱く。コミュニケーションツールとして酒も好み、古谷信とは意気投合する。雑な性格で細かいことは気にしない女好き。ただし笑い話として「海外で女を買おうと思ったら人身売買だった」などという話を披露するなど少々アレなところがある。

 川原勘助は狂人でありその目的が阿鼻叫喚を観察して楽しむことであるから会話や情報交換などは行わないが大勢の行動に付いて回り、食事および酒の席にも参加する。人いるところに川原あり、である。周囲がパニックになればなるほど顔はほころび、殺人あるいは死者選びが行われたときにその笑顔は最高のものとなる。

 これらNPCの中からPLの人数に応じて任意に参加者を選んでよい。婚約者、あるいは配偶者を置いてひとりで参加したという設定でも構わないが、どちらか一方が死者スタート、もう一方が生者スタートなどの場合はKPに任意に設定を追加、変更してよい。また川原勘助を登場させる場合は必ず死者スタートとする。

 本ツアー、および民宿にはいくつかの噂が存在する。特定のNPC、またはPCが以下の情報を事前にもっているものとする。全ての噂をPL、あるいはNPCに配布する必要はない。

噂1

この民宿は番頭も仲居も絶対に姿を見せないが、サービスはしっかりと行われる。誰一人として関係者を目撃したものはいないことから狐狸妖怪が営んでいるらしい。

噂2

このツアーに参加したものが予定通りの日程で帰ってくることはない。あまりにも居心地がよく誰にも逆らえない魔力が働いているらしい。中には帰ってこないものもいる。

噂3

ツアー旅行であるにも関わらずなぜか毎回現地集合の参加者がいる。ツアー日程前から民宿に滞在しているらしい。

噂4

1度このツアーに参加した者は多かれ少なかれ人が変わって帰ってくる。誰しもの人生観を変える何かがこの民宿には存在するらしい。

噂5

この民宿の温泉はどんな病気もたちどころに治してしまう力があり、死人ですら蘇らせることができるらしい。

噂6

ツアーから帰ってきた者は、特定の植物に執着あるいは忌避する。その植物は数種あり人によってばらばらだが、多くの者に「竹」が共通している。

死に方

 どの部屋においても死者の死に方は一様である。全身が海綿状に変貌しどこからというでもなく血を滲ませて倒れている。死体そのものに損壊はなくただただ体中の組織が変化しているだけに見える。

 ただし部屋ごとに死に際に見る夢は異なり、その詳細は以下の通りである。

  1. 梅の間 :1/1d6

    • 全身の骨という骨が体内にありながら軋みを上げ、ぱきり、ぱきりと割れていく。髄が体中に染み渡りやがて呼吸もままならなくなり緩やかに意識を手放してゆく。

  2. 桃の間 : 1/1d8

    • 足の裏から始まり、床や壁や自身の体や、何かと接触した部分からずるりずるりと体が腐り落ちてゆく。最期に見るは頭蓋か藺草か。

  3. 桜の間 : 1/1d6

    • 胸から手から脳髄から、みしり、みしりと桜の木が全身を食い破って成長し花を咲かせる。遠のく意識の中、薄紅色の花弁は徐々に赤みを増しやがて深紅を滴らせ全身を赤く染め上げていく様を知る。

  4. 藤の間 : 1/1d6

    • 天井からゆらり、ゆらりと藤の花が伸びてくる。思いもかけない事態に呆然としているうちに視界は薄紫色に染まり、頬をくすぐる花弁の感触に五感を取り戻した時、既に足元が蔓によって固められていたことに気がつく。じわりじわりと上を目指し伸びてくる蔓は無邪気に脚を、腹をぎりぎりと締め上げ骨を砕かんとばかりに支柱を求めさまよう。やがて蔓と花弁の交わるとき体のどこかで骨の砕ける音がした。

  5. 栗の間 : 1/1d6

    • 全身が異様なむず痒さに襲われ思わず身じろぐと、激痛に苛まれる。何事かと痛む箇所に目を向けると、体内から無数の棘が突き出していることに気がつく。肘を曲げれば肘から棘が顔を出し、頬を触れば頬から、そして掌から棘が突き出してくる。もがけばもがくほどにむず痒さは激痛へと変わり滔々と流れ出す血液に全てを諦めまぶたを下ろしたとき、新たな激痛を覚える。

  6. 菊の間 : 1/1d6

    • ふわり。ふわり。視界の端に鮮やかな黄色が、眩しいばかりの白色がちらつく。ふとそちらに目をやると、床一面に菊の花が飾り付けられていた。それは天井から、いやどこからともなく空中に現れ床一面に降り積もっていた。降り積もる菊の花がわが身を埋めんと体に触れたとき、そのありえないほどの重さに手が、足が悲鳴を上げる。ふわり、ふわり。胸が、腹が押し潰されてゆく感触。そして次は頭上に、ふわり。

  7. 椿の間: 1/1d8

    • ぼとり、ぼとりと皮膚や骨や内臓が、全身の体組織が欠け落ちてゆく。指が落ち腕が落ち足は外れて崩れ落ち、首がとれ眼球が抜け落ちてゆく様を声を発することもできずにただ見つめる。

脱出の儀式

この民宿から脱出するためには「竹の間」を完成させる必要がある。「竹の間」は部屋としては存在せず、民宿内のどこでもない部屋を「竹の間」にする必要がある。

民宿および敷地内には竹に関するものはロビーにしかない。すなわち、7本の竹を円形に配しその内側に電灯を配した間接照明ただひとつで、これを移動することはできない。よって、ロビーを「竹の間」とすることでこの民宿からの脱出ができる。

「竹の間」を作ることで脱出できるとの示唆は以下の場所から得られる。

  1. 受付の宿帳 :12年前までは団体客用の大部屋「竹の間」があった。

  2. 事務所書架 :12年前に改装を行った。

  3. ロビー壁 :15年前の地方新聞記事スクラップ。「民宿めぐり屋の竹、一斉に開花」
    「100年に一度の奇跡」の見出し。その下には当時の写真がある。
    その写真から開花した竹は民宿家屋の裏にあったことがわかる。

  4. 事務所仏壇 :15年前の地方新聞記事スクラップ。「開花の竹、枯死」
    15年前の手紙。「竹の間で見る竹の花は驚くほど美しかった。」
    11年前の手紙。「竹の間がなくなったのは、枯れてしまったからだろうか」

  5. 一階倉庫 :事務所書架に入りきらない文書や使わなくなった物品などあらゆるものが所狭しと詰め込まれている。PLが何らかの物品を調達したいと申請した場合、KPの任意でこの倉庫から調達できる場合がある。例を挙げれば、乾電池やウエス、近接格闘武器などである。上記をPLに伝えた上で文書類について捜索・探索の申請があった場合余りに雑多で雑然としていることを理由に図書館技能のみによる探索を-50のペナルティ付きで行うことができる。この探索は3時間かかるものとし捜索時間1時間追加または捜索回数の増加とともに+10のボーナスが得られる。これに成功すると「竹の間」でのみ振舞われた「めぐり屋名物筍鍋」に関する資料を発見することができる。この資料によると、宿泊最終日の恒例として部屋の真ん中にある囲炉裏を全員で円座に囲み、窓から見える竹を楽しみながら筍をメインとして各部屋の名を持つ食材や料理を楽しむというものであったらしい。団体客が「竹の間」に宿泊していなかった場合は他の宿泊客を集め筍鍋が行われることもあったという。

 ロビーを「竹の間」にするためには客室名が示す植物に関連した品々を竹一本一本の根元に番号順に配することである。この照明の根元を囲むように白い玉砂利と黒い円盤状の石が置かれ、この円盤状の石は竹一本に対しひとつずつ固定されている。よって、ここに上記を配置すればよい。始点と終点の位置は問わない。完成した「竹の間」に生きている者全員で集まったときこの悪夢は終わりを迎え、死者を除く全員がうつし世に帰還できる。なお、全員集まった状態で「竹の間」を完成させてもよい。

「竹の間が完成すると同時にその照明は、しかし電灯としてではなく竹の一本一本がぼんやりと光を放ち始めた。その節々から枝葉を伸ばし、その先の小さなふくらみが……蕾が花開いたとき周囲は真っ白な光に包まれ、誰もが視界を失った。気がついたとき、そこはただの廃墟でしかなく、しかし辛うじてそこが巡り屋であるということはわかった。」  SANチェック1/1d3

各部屋の名を持つ植物は、以下の場所に配置されており、そこ以外の場所にはひとつとして存在しない。これは竹についても同様でロビーの照明以外には竹串の一本すら存在しない。

  1. 梅 :厨房の床下にムロがあり、ここに梅の果実酒が漬けてある。

  2. 桃 :大浴場の倉庫に入浴剤として桃の葉を乾燥させたものが入っている、

  3. 桜 :大浴場(女湯)の壁に描かれたタイル絵の一部が剥がせるようになっている。

  4. 藤 :民宿の庭に設置されたあずま屋、その日よけに藤が植えられている。

  5. 栗 :民宿裏にブルーシートを掛けられて積んである薪木が栗材である。

  6. 菊 :受付の奥、従業員事務所に設置された仏壇に菊の花が活けてある。

  7. 椿 :庭に造られた池の横に椿が植わっている。

民宿敷地の見取り図は以下のようになる。

minshuku
図1:民宿敷地見取り図

 敷地内に留まらずツアー参加中は携帯電話などは全て圏外、GPSも不能となる。民宿備え付けの固定電話および公衆電話は受付やロビーにあるがどれも不通となっている。ただし内線は使用することができ、各部屋や受付同士で通話することはできる。

 カーポートおよび正面入り口前は砂利が敷き詰めてあるが生垣の向こう側、庭には芝生となっている。入り口正面の駐車場には民宿名の入った大型バンが一台停まっており、建屋裏の物置横には同じく民宿名の入った軽トラックが停めてある。どちらの車両もガソリン残量は半分ほどで鍵は開いたまま、キーは車内に放置されている。しかしこれに乗って帰還しようとしても、一本道であるにも関わらず2時間ほどで民宿の前に戻ってきてしまう。

 物置は柱と三方に壁を立て屋根を設置したただけの簡素な作りで廃品や古い家具、冬囲い用品の一式などが積んである。鉈や鎌、高枝切り鋏などやや大型の刃物などがここから入手できてもよい。

 池は深さ30cmほどしかないが、こいに溺れることはできる。なおコイはいない。  あずま屋にはベンチとテーブルが設置されひと時の憩いが可能。心ゆくまで思索に耽ることができる。

minshuku 1f
図2:民宿1階見取り図
minshuku 2f
図3:民宿2階見取り図

民宿内の客室は全て同じ間取り、同じ内装であるものとしごくごく一般的な民宿のそれである。

部屋割り表は一階ロビー端にある館内見取り図に名前の入ったマグネットが貼り付けてあるだけである。

 従業員の姿を見つけるべくPLが張り込みなどを行う場合、目を逸らした、何かに気をとられたなどの一瞬の隙を突いて食事や寝具の準備など民宿側の作業は粛々と進められる。ひとりでに鍋がコンロの上に移動した、などではなく瞬きした瞬間に鍋がコンロの上に乗っていたという描写を行う。

 廊下の受付から右側は「従業員以外立ち入り禁止」の札がかかっているが、特に人の出入りを妨げるものはなく罠の類も当然ない。当然従業員が姿を見せることもないため、実質出入り自由である。

 厨房は全てガスを用いた調理器具で、現在の民宿には囲炉裏も存在しないため物置横に積んである薪木を使うようなものは一切ない。

 露天風呂はなく混浴もない。

 図3において2階客室の配置は左端から連番順に配置してあるがKPの任意に入れ替えて現象の法則性を推測しづらくしてもよい。

部屋数の拡大について

 当初用意した10部屋の一覧は以下の通りである。

  1. 梅の間

  2. 蕗の間

  3. 桃の間

  4. 桜の間

  5. 藤の間

  6. 栗の間

  7. 葛の間

  8. 菊の間

  9. 柊の間

  10. 椿の間

死に方

2.蕗の間 : 1/1d6

体の表面から徐々に徐々に溶け落ちてゆき、その奥から蕗が伸びてくる。視界は幾重にも重なった蕗の葉に覆われて、やがてそれらが倒れ朽ちていくとき己の最後の一欠片が溶けてなくなろうとしていることに気がつく。

7.葛の間 : 1/1d6

部屋の壁から床から天井から無数の蔓が伸び、瞬く間に部屋中に広がる。行き場を失った蔓の先は徐々に部屋の壁を床を厚くし、あなたをのみこんでいく。全身が蔓に覆われ身じろぎひとつできなくなった時、その先は口腔や眼窩を見つけ出す。

9.柊の間 : 1/1d6

ちくりと首筋を刺す感触に身を起こすと、床一面に柊の葉が広がっていた。いや、部屋そのものが柊でできた箱と化していた。認識した瞬間、体を支えていた腕や脚が枝葉の間に滑り落ち、全身が柊の床に押し付けられる。硬い枝葉は触れる肢体を切り裂きもがくほどに無数の傷を深く刻み付け、流れる血が止まることはない。

儀式に必要な品々の配置

2.蕗

民宿厨房の冷蔵庫に食材として蕗が入っている。

7.葛

民宿裏にある古い物置に絡みつくように葛が生えている。

9.柊

民宿を囲うように設置された生垣が柊である。

 以上の10部屋よりさらに部屋を増やしたい場合、部屋の名に年1回花を咲かせる樹木の名を冠すること(例えば松)、死に際の夢はその植物を連想させるものであること、そして部屋に付ける連番は1月を始点とする開花順であることとするが、開花以外でも一般的にその植物と言えばO月のOOであることが連想できる場合はこの限りでない(例えば蕗)。

補補足

 PL数2、ツアー参加者計7、死者3名で行った第二次テストプレイの結果、PC間および協力的NPC間での意思疎通が円滑に進まず、第一次テストプレイ時よりも時間がかかる(11時間)という結果に陥った。KPのミスによってPLを混乱させてしまった事実もあるが、2日目時点ではPL全員が生存している展開が望ましいかもしれない。

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