CoCシナリオ「大地の領主」

参加人数3人以上推奨

1. はじめに

 このシナリオはCoC第6版で遊ばれることを前提としたものです。サプリメントは特に必要としません。日本は北海道の寒村を舞台としているため、その辺の知識があるとより楽しめるかもしれないし、そうではないかもしれないです。

 プレイ人数は3人以上ですが、一人でも可能なように作成したつもりです。その際は、死亡率が極めて高くなることを覚悟してください。孤独ということに、自然は常に厳しく当たってきたのです。

 戦闘は起こりえますが、使える重火器類には日本の法律に基づいた制限があるでしょう。せいぜい持ち歩けるのはレボルバ、猟銃としてショットガン、あとは鉈くらいなものです。警察や猟師、記者などは導入しやすいです。互いに知っているとやりやすいでしょうが、必須ではありません。必須なのは運転免許です。

2. 前提

 北海道北部の山間にある町、赤武内(あかむない)が舞台である。時代は1975〜85年をイメージしているが、時代背景や、土地を変えることはシナリオにあまり影響しない。

2.1. 地理情報

 赤武内は人口7000人ほどの山間の町である。河川近辺の平野部に寄り添うように町があり、市街地を挟むような形で森林や山が張り出している。畑はより下流域にあり、町と自然を区切る緩衝地帯の役割は、この町にはない。そのためシカなどの野生動物が町内に出没する頻度が多く、住民の悩みの種となっている。最近、近隣の炭鉱が閉山してからというもの、買い物客や観光に訪れる人はがくんと減っており、ここにも衰退の波が訪れようとしている。町内は小さな電気店や金物屋などはあるが、重機類やその他複雑なものは、この町で購入することはできない。

2.2. (KPにとっての)前提

 炭鉱の閉山は、表向きは坑内事故やエネルギー政策の転換ということになっているが、その実炭鉱内でクトーニアンが発見されてしまったのが真相である。舞台から3年前に坑内からクトーニアンの幼体が現れ、鉱員を数名殺害。動転した他の鉱員は坑道を封鎖するものの、地中を自由に移動するクトーニアンに対しては効果がなく、発狂して坑内にて火を使用。漏出ガス爆発が発生して、結局閉山となった。結果的に沈静化したと思われていたクトーニアンであったが、実際はしぶとく生きており、山中に息をひそめていた。坑内の延焼により地温が耐え難いほど上昇したため、クトーニアンはしばしば外に出るようになったが、今度は野生動物たち、特に臆病で知られるヒグマを混乱させることになる。彼らは食糧確保が困難になった、あるいは狂気から、街へと生存圏を確保しようとしていた。ヒグマが急にあらわれるようになったのはこのような事情による。生存した鉱員でクトーニアンを目撃したものも数名おり、シナリオに登場する「羽生龍尾」もその一人である。

 羽生龍尾は、閉山後は赤武内役場の森林課にて臨時採用職員として働いていたが、あるとき(およそ1年前)クトルイワ山中で両手で掬える程度の大きな水晶のようなものを発見。森林課出張所にて密かに保管する。それに目をつけたのがかつて幼体だったクトーニアンである。完全回復のためにMPを欲していた彼?はわずかながら人間の無意識下に働きかける程度には成長しており、羽生を何とか操って持ってこさせようとする。しかし、完全なテレパシーではない(あるいは予想以上に羽生の抵抗が強かったのか)ので、羽生を混乱させてしまい、山への執着心を植えつけるだけに終わる。羽生は結局近隣住民からの通報により保護、役場は休職扱いとなり、精神科への入退院を繰り返すことになる。息子の竜賀ももはや愛想を尽かし、家に帰ることはほとんどなくなっていた。その息子に悲劇が起きることになる。

2.3. 赤武内町地図

map

①赤武内町役場:森林課、猟友会もこちらが窓口になる。通常の市町村と同様の普通の役場。

②赤武内警察署:熊被害対策本部が立っており、こちらで指揮が取られている。

③赤武内病院 :近隣の町で一番大きい病院。羽生龍尾もここの精神科に通院している。最近は熊被害のけが人が搬送されることが多い。

④旅館    :駅からほど近い旅館。PLが赤武内町民でないならここが拠点になるだろう。

⑤羽生龍尾の家:羽生龍尾は入院している期間があったためかここをあまり綺麗にはしていない。

⑥赤武内炭鉱ズリ山:ボタ山とも。採掘で出てきた不要な土砂を貯めこむところ。ときおり崩れたり、乾燥で残渣の鉱石が燃えたりする。

⑦炭鉱設備  :炭鉱の事務所だったが、閉山した今は廃墟となって久しい。

⑧炭鉱主坑口 :赤武内炭鉱の坑道につながる。現在は瓦礫で埋もれている。

⑨森林課出張所(旧立坑掘削用休憩所):立坑(⑪番)掘削作業者用の倉庫兼休憩所であったが、現在は森林課に移管され、クトルイワ周辺の森林管理のために出張所として使われている。

⑩クトルイワ :赤武内にほど近い山。標高は700m。そこまで高くない山なので、学校の遠足などにも使われる身近な山だったが、熊騒動が起きてから人が入らなくなって久しい。時折、地鳴りのような音がするということを話す人もいるが、火山活動はない。

⑪炭鉱立坑  :炭鉱坑内へ空気を導通するため、また土砂の迅速な運搬のために空いている縦穴。主坑口は厳重にふさがっているが、こちらはフェンスで囲ってブリキの板をかぶせているだけの割と簡素な構造。密閉のためにコンクリでリーリングのようなものがされているが、頑張れば外せる。縦穴で中にはいることは難しいが、中になにか入れることはできるかもしれない。

2.4. NPCデータ

羽生龍尾 男性 43歳

 赤武内炭鉱の元坑内保安責任者であったが、閉山後は赤武内町役場森林課の臨時採用職員として働く。熊騒動の1年ほど前から挙動不審になり、職務中の山中放浪が発生、休日でもしばしばクトルイワ山中に行っては帰りを繰り返すようになる。父親の精神状態に嫌気が差したのか、息子の竜賀が家を出てしまうと、彼の精神不安定状態に拍車がかかるようになり、精神科へ通院するようになった。もともと落ち着いた性格の持ち主だったが、このところは怯えた目をしながら挙動不審な状態になってしまっている。

STR 14

DEX 9

INT 10

CON 10

APP 8

POW 8

SIZ 13

EDU 9

DB 1d4

HP 14

MP 8

SAN 20

アイデア 50

幸運 40

知識 45

電気修理(40)

機械修理(50)

重機械操作(70)

運転(大型)(40)

地質学(30)

目星(50)

田中河井 男性 28歳

 警察官。熊事件での情報収集担当。羽生のことは知っているものの今回の件との関連性は特に彼は考えていないようだ。

STR 12

DEX 15

INT 7

CON 14

APP 12

POW 10

SIZ 12

EDU 11

DB 0

HP 12

MP 10

SAN 50

アイデア 35

幸運 50

知識 55

言いくるめ(40)

運転(50)

法律(15)

3. 異変

 最近、道北地方を中心にこんな新聞記事が載っている。

article

 事の発端は、3か月前に発生した女性の行方不明事件である。町のはずれで姿を消した女性が残したものは、散り散りになった遺留品、そして大きな熊の足跡であった。警察はヒグマによる襲撃事件と断定し、山中の捜索を進めた結果、川の上流部にて食いちぎられた女性を発見。町は恐怖のどん底に陥ることとなった。

 しかし、事件はそれだけではなかった。現在までの3か月でヒグマの目撃情報が前年度合計の6倍、死者4人を含む被害者が15人を超える大惨事になってしまったのである。しかし、襲撃したヒグマは猟友会にて4頭が射殺されるも、目撃情報は後を絶たず、町は厳戒態勢に入っていた。

 探索者は各々の理由からこの熊害を食い止めるために奔走することになる。警察は道警本部からも応援を呼び、町民の警護や行方不明者の捜索をすることになるかもしれない。猟友会会員ならば、襲撃して人の味を覚えてしまった熊を殺さなければならないだろう。その他の一般人は、炭鉱に関係があったのかもしれないし、導入時にいきなりヒグマに出くわすかもしれない。

 熊の出没は極めて不連続・不規則なもので、待ち伏せして退治する方法には工夫を要する。

 PLがロールプレイを始める日もクマの目撃情報があり、PLたちは警察署(あるいはもっと僻地の駐在所でも良い)に集まる。警察官や猟師などなら、警察の要請で集合したことにすればいいし、一般人ならいっそクマを目撃させて警察へ逃げ込んだことにしても良い。

4. 赤武内署

 警察署では職員たちがクマ対策本部を立ち上げて24時間体制で情報の収集や対策に追われている。壁には大きな地形図が貼られている。クマ対策に関わりのある人の場合、担当者(警察官の田中)が「通常の2倍のサイズを持つ巨大クマの目撃情報があり、市街地にも現れるかもしれない。」と通告する。とくにパトロールや山狩に強制的に参加させることはないが、市街地でのパトロールくらいならこちらから頼んでも支障はない。一般人が巨大クマ情報を聞くには「言いくるめ」や「信用」ロールの必要がある。一般人を安易に怖がらせることはできないためである。

4.1.目撃情報分布

 「目星」か何かに成功していると、次の情報がわかる。地形図には、クマの目撃情報が赤く記されている。かなり広範囲に赤い点が散らばっているが、町の東側で赤い点がやや集中している様子がわかる。

4.2. 移動中の遭遇

 PLが情報収集のために移動するときにも、クマは町中をうろついている。PLたちが場所を移動した時に、10%の確率でヒグマと遭遇する。ヒグマのステータスは黒クマを参照すること。一回の移動(役場→警察など)で1d100を振り、失敗したらヒグマが出てくる。ファンブルで巨大クマ(黒クマのステータス1.5倍)。距離は25m。

5. 赤武内町役場(猟友会)

 「猟友会」と聞いて、実際の施設はどこかと想像するかもしれないが、赤武内町役場の森林課に事務室がある。(普通の人は知らないかもしれないので、「知識」が必要かも)もし赤武内署でなく最初にこちらに来た場合でも、警察署と同様の対応になる。しかし、こちらでは森林課の職員の話を聞くことができる。彼らは赤武内の国有林を管轄するプロであり、野生生物の動向にも詳しい。「言いくるめ」などのロールに成功すれば、彼らはあくまで予想としながらも、町の東側にあるクトルイワの異変について教えてくれる。曰く、

  • 異変は閉山後から起きていた、動物が騒がしくなった。

  • 1年ほど前から倒木が多い。なぎ倒された感じ。熊の食料が減った。

  • 閉山は炭鉱事故が原因というが、なにかあったのではないか。

5.1.クトルイワの情報

 クトルイワとは町の東側にある山である。中腹に炭田があり、炭鉱町であったが、現在は廃坑により廃墟になっている。職員は、この炭鉱が閉山してからというもの、動物たちの様子がおかしいという。ヒグマが多く出没するようになったのも閉山してしばらくたった頃だという。彼はすべて伝聞調で語るのだが、その理由は、これを詳しく知る職員が休職中であるためである。

5.2.休職中の職員

 彼は「羽生龍尾」といい、かつてクトルイワを中心とした鉱山に務めていたが、閉山後は役場で臨時雇用されて働いていた。現在は休職して、町の病院へ通院しているとの事だった。羽生はたびたび仕事でないのにクトルイワ方面へ出没してしばらく帰ってこないこともあり、街では噂になっている。

6. 町での情報

 町で炭鉱あるいはクトルイワについて聞くならば、羽生龍尾のことを教えてくれる。彼はヒグマに食われた羽生竜賀の父親で、炭鉱で保安責任者だった。しかし閉山後はやや精神が不安定になり、トラブルがあるので有名だった。町の人は炭鉱の人夫による購買需要で大いに稼げており、羽生については幾分か同情的である。しかし中には坑内事故を防げなかったなどと、口汚く罵る人もいる。彼は保安責任者であり、坑内の安全を管理する立場だからだ。

7.赤武内病院

 羽生が通院している病院で話を聞くのは「信用」ロールなどが必要。医師か看護師が彼の「病気」について話してくれる。彼自身の身体機能には何も支障はないが、時折ふらふらと山の方へ行ってしまうことから、入院させているということだった。医師からはこれ以上のことは聞き出せないが、「忍び足」や「言いくるめ」などを駆使して羽生に直接話を聞くことができる。

7.1.羽生の話

 彼は年齢にして40後半のはずだが、すっかり憔悴しておりそれより老けて見える。白髪がちらほら目立っており、背も丸まって元気がないが、鉱山のきつい仕事でついたであろう良い体つきをしている。羽生は、突然の来客に驚き、不安になるが、もし「精神分析」でもできるのなら、すぐに落ち着くだろう。彼は、数年前に炭鉱が閉鎖されてからはしばらく何もなかったが、(とはいっても周囲からすると十分情緒不安定だった)ここ1年位、なんとなく山が気になって落ち着かず、機会があれば山に行っていたのだという。その欲求は徐々に増していき、無理やりこの病院で入院させられているということだった。鉱山の施設で生きているのがまだあり、そこが異様に落ち着くのだそうだ。鉱山事故の話は頑なにしようとしないが、ただひとつ、「ヤマを燃やしちまったからヤマが怒ってクマが出てきたんだ、アイツが怒ったから…」とだけつぶやく。

8.羽生龍尾の家

 鍵がかかっているので、何らかの能力(あるいは窓を割るなど)して入れる。

羽生はこの家にいることが殆ど無いためか、室内は雑然としている。とくに気になるものはないが、「目星」に成功すれば、メモのようなものを見つける。そこには乱雑な字でこう書いてある。

「寝ても覚めてもあの得体のしれない芋虫が頭の中をはいずってくる!」「あのヤマにはもう行きたくないのにあそこに行くと無性に落ち着く…たくさん人が死んだのに落ち着けるだなんて俺はもう狂っているのか」「小屋ごと燃やしてすべてを無くしてしまいたいが、そんなことを思った瞬間また は い ず って く る」

あなたはそのメモにそこしれぬ不気味さを感じる。SANチェック(0/1)

もし非常に効果的な探索ができたなら、ここで小さな水晶のかけらを見つけてもいい。親指ほどで、なんとなくひんやりしている。オカルト-10に成功した場合、これは古のものの水晶であることがわかる。なお、使用するとMPが1回復する。

9.山へ

 山へは町から車で30分ほどで山道へ行くことができる。なお、山でのヒグマ遭遇確率は15%とする。以後移動時に一回1d100を振り、失敗したらヒグマと遭遇する。距離50m。山道からは、鉱員詰め所(現在は森林課の出張所として使用されている)、クトルイワ山頂、炭鉱入り口へ行くことができる。それぞれ互いに歩いて1時間〜1時間半程度。詰め所から炭鉱まで車道が通っているが、道に大きな陥没があり、車は使えない。「地質学」があれば、これは地下に大きな空洞があることを示していることがわかる。

10. 森林課クトルイワ出張所(鉱員詰め所)

 黒い木造の建物。年季は入っているが、そこそこ丈夫な作りをしている。「目星」をすることで、建物の裏手側の森近くの木に何か傷のようなものがあることがわかる。「生物学」により、熊の爪あとであることがわかる。大きさはかなり大きいようだ。

 室内は詰め所だった名残か、長椅子と机があるくらいで、物置然としている。室内はやや暗く、窓からの光だけが光源になっている。木造であるので隙間風はふくが、そこまで寒いわけでもなく、むしろ暖かい。

 「目星」に成功すると、水晶のように透き通った石を見つける。両こぶし大の大きさで、石から結晶が伸びている。それに触れると、意外なほど冷たい。(古のものの水晶。MP回復25の効果)

 ここで探索をしていると、突然室内が暗くなる。唯一の光源である窓が、なにか大きいもので覆い隠されていることがわかる。突然窓が割られ、室内が大きく揺れる。クマが襲撃しているのだ。窓からはクマの腹部が見え隠れする。クマは全長3mはあろうかという巨体であなた達に対峙する。今まで巨大クマを見たことがなければ、ここでSANチェックを行う。(0/1d3)クマを倒してもいいし、逃げてもいい。逃げる場合は、熊の移動率が人間の2倍であることに留意すること。

11.炭鉱入り口

 炭鉱入り口は鉄扉の周囲を瓦礫で塞いでおり、いかにも急造の作りであった。周囲に「目星」をすると、運搬用トロッコや、消火用ポンプ、ホッパーなどがそのままになっていることがわかる。入り口の周辺で「聞き耳」をすると、なにか低くつぶやくような声が聞こえてしまう(SANチェック,0/1)。もし、古のものの水晶をもっていたら、炭鉱入り口が突如破壊され、なかから巨大な触手の塊のようなものが出現する。クトーニアンだ。クトーニアンはまだ幼体であるが、脱皮を3回終えており、ほとんど成体に近い。水に弱いのは同じで、消火用ポンプは水さえあればそのまま使用できる。

12.エンディング

 もし巨大クマとクトーニアンを両方撃退していたなら、町は完全に平和になる。クマは山に戻り、木の実を十分に堪能するだろう。

 クトーニアンのみだったら、クマは町に戻るが、巨大クマは人の味を覚えてしまったため度々出没することになる。クマ被害はしばらく続くだろう。そののちに、過去最大の熊害事件として知られることになるかもしれない。

 巨大クマのみであったら、クマの市街地出没はしばらく続いた後、ぱったりと見なくなる。それと同時期に、羽生龍尾が行方不明になる。最後の目撃は、クトルイワ山狩り中に、警察が山中で目撃したということであった。

参考データ

1.ヒグマについて

エゾヒグマ(学名:Ursus arctos yesoensis)は北海道に生息するヒグマの一種である。雑食であるが、ツキノワグマより肉食性が強いと言われている。冬眠明けの春先は高タンパクのエゾシカの死骸が食され、初夏は植物やアリ、晩夏は農作物でしのぎ、秋にはヤマブドウやオニグルミなどの果実・木の実がよく食されるほか、エゾシカの摂取量が増加する。河川が近いと、サケ・マス類も対象になる(人間によるサケ類の捕獲や河川改修などで、実際に食されることは少ないようだ)。体重はオスで150-300kg, メスで100-200kg。ツキノワグマのほぼ2倍といってよい。北海道の55%がヒグマの恒常的生息域で、生息域はおもに山林、草原。大雪山系などの高地にも適応する。一般に嗅覚に優れていると言われており、それと比較すると視覚や聴覚は並のようだ。行動範囲は他のクマと同じく保守的で、栄養が十分にある土地ならば行動範囲は狭い。しかし、栄養不足や人の味を覚えるなどの要因で長距離を移動し、人里に現れることはしばしばある。一般に早朝や夕方が活動時間。

北海道でのヒグマ被害は主に農業被害で、農作物を荒らされたり、ゴミなどを食い散らかすことが多い。人的被害(熊害)はおおよそ年に2人が死傷する計算になる(1980〜2006年で38名が負傷・6名死亡)。遭遇例の多くを占めるのは捕獲作業での人間の積極接近で、ヒグマから積極的に接近してくる例は比較的少ない(1970〜1991年での人的被害例37例中12例が人間から接近、6例がヒグマから接近)。ヒグマから積極的に近づいていく理由としては、人間の所持する食料の味を覚えてしまっていることが挙げられる。このような場合はヒグマは執拗に人間を狙ってくるので被害が拡大しやすい傾向にある。年間平均捕獲数は狩猟で約100頭、有害鳥獣駆除で約300頭(いずれも2004年)。ちなみに、生け捕りの際はよくドラム缶罠が用いられる。

ヒグマとツキノワグマの相違点を簡単に書いておく。

* 体格はヒグマのほうが体重で2倍程度大きい。 * ツキノワグマより肉食性が強い雑食。(もっともその地域の栄養環境による) * ツキノワグマのように木に登る行動は頻繁にはない(ないとはいってない) * ツキノワグマのような熊棚を作ったり、木の皮を剥ぐようなことは少ない。

2.PCがヒグマに出会ったら

flowchart

a)逃げる

追う。ヒグマは逃げるものを追う習性がある。突進する速度は50km/h以上と言われている。 白鵬 がこの速度でこちらに向かってくることを想像してみよう(しかも強力な牙・爪つきの ミュータント白鵬 がだ)。

b)先制する

有効な手段その1。実際にヒグマとスコップで対峙して負傷で済んだ例など複数あり、ヒグマと出会ったらナタで攻撃せよという専門家もいる。もちろんPLの能力による。

c)じっとする

ヒグマのステータスによる。本シナリオでのヒグマは炭鉱付随施設での人間の食料(あるいは騒動の時の人間)を知っているので、基本的に襲う。満腹でも戯れに襲うのは三毛別でも証明されている。また、いわゆる「死んだふり」で生還した例もあり、そのようなときは1D10で1がでたら放っておいてもいいだろう。それ以外は頑張れ。

d)目線を合わせて後ずさり

有効な手段その2?背中を見せると襲ってくるので、背中を見せないという選択。熊にあった時にはこれとよく言われる。が、有効性は不明。

3.ヒグマの痕跡

大きくはフンと足あと。足あとならばPLは予備知識無しで判別して良い。フンは知識判定を要する。ヒグマは消化が悪いので、食べたものがほぼそのまま出てくる。KPがフンについて描写するときはその点を踏まえるとよりリアル。また、果実類の食事の際に樹木に爪痕がつくこともある。

参考文献

  • ヒグマとツキノワグマ G.F.ブロムレイ 思索社

  • ヒグマそこが知りたい 木村盛武 共同文化社

  • 日本のクマ ヒグマとツキノワグマの生物学 坪田敏男、山崎晃司(編) 東京大学出版会

  • ヒグマ学入門 自然史・文化・現代社会 天野哲也、増田隆一、間野勉(編著) 北海道大学出版会

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